
私は2012年1月より米国サンディエゴにあるSanford-Burnham Medical Research Institute(SBMRI)のJohn C. Reed研究室に留学をさせていただいております。
現在の近況および留学始めたばかりの視点から感じたことを書かせて頂きます。
研究室があるLa Jolla(ラホヤ)はサンディエゴダウンタウンから車で20分、ロスアンゼルスから2時間の場所にある海沿いのリゾート地です。
またLa JollaにはUCSD、スクリプス研究所、ソーク研究所はじめ数多くの研究所がある学術都市としても知られています。南カリフォルニアに位置するため温暖な気候に恵まれ、かつ治安がとても良い街なので生活するには最高の街です。

左から私、John Reed教授、Shu-ichi Matsuzawa博士
John Reed教授(写真1中央)はBcl-2の機能解析など癌・Apoptosisの研究で世界的に有名な方です。Nature, Cell, Scienceはじめ関与・執筆した論文数は800を超えます。
Reedラボには現在18名のポスドクおよびシニアサイエンティストさらには4名のテクニカルアシスタントがいます。
しかしJohn Reed教授はSBMRIの所長も努めており、非常に多忙なためラボにはほとんど居ません。月曜朝8時からのラボミーティングで会う程度です。
そんな中、我々の研究を常に導いてくれているのがShu-ichi Matsuzawa博士(写真右)です。研究面だけでなくプライベートでも大変お世話になっています。
Reedラボの研究内容は多岐にわたっていますが、その一つにUCSDのThomas J. Kippsラボ(現在、小原雅人先生が留学中)をはじめ、M.D. Anderson Cancer CenterやMayo Clinicなど数施設と共同でCLLに関する研究も行なっています(Chronic Lymphocytic Leukemia Research Consortium: CRC)。
私も5月からこのCLL細胞を用いた研究に着手することとなりました。様々な研究に関わる中から、色々なことを学んでいきたいと考えています。
SBMRIはFACS、シークエンス、RT-PCR、病理、siRNAスクリーニング含め数多くの分業体制が整備されており、とても効率の良い環境で研究を進めることが出来ます。
また、ラボ間の協力も盛んに行われております。
さらにJohn Reed教授は我々が研究するのに困らないように、毎年2億円以上のお金を集めてきます。整備された環境とその潤沢な資金で、ポスドク達は思う存分研究に専念することができています。
ラボや検査部門の壁を超えてお互い協力し合いながら研究しているのを目の当たりにし、日本の大学も学ぶべきところが数多くあると感じました。
Reedラボには日本からも多くの学生や医師が見学・実習に来られています。もし御興味のある方がいればご連絡いただければと思います。

ルームシェアのオーナーの誕生会
サンディエゴに来てアパート探しを始めましたが、気に入ったアパートが2月中旬からでないと入居出来なかったため、はじめの1ヶ月は英会話の勉強も兼ねてルームシェア生活をすることとしました。
探し出したのは、隣り合う2軒の民家に約10人(多国籍)がルームシェアしている所でした。今のアパートに移った後も、月1回のペースでホームパーティに誘われます(写真)。
ルームシェアのオーナーつながりでUCSDの心理学教室の教授とも知り合うことが出来ました。様々な国の人と話す機会を得られたことは自分にとってプラスになるものと考えています。
「留学すると自然に英会話が上達する」と考えている方もいるかもしれませんが、少なくとも私には当てはまらず、苦労と挫折の毎日です。
特に苦労している点は「リスニング」です。ネイティブの話す英語はとても早いため完全には聞き取れません。しかし上達!?した点もあります。
この3ヶ月間で私はインド人と話す機会が多く、おかげでインド人の話す英語は比較的聞き取れるようになりました。

SBMRIの前で
うちのラボだけでは無いのでしょうが、こちらでは木曜の夕方くらいからみんな週末モードになりソワソワし始めます。そして金曜の昼食後にはラボの人口密度が減りはじめ、夕方過ぎまで働いているのは日本人はじめ限られた人だけになります。このスタイルが良いかどうかはさておき、彼らの生活スタイルを見ているうちに「 日々の生活をエンジョイする」ことを心掛けるようになりました。これは日本にいた時には考えもしなかったことです。当初は連日深夜遅くまで実験し、土日も実験していましたが、現在は朝9時~夜8時に実験を限定し、土日もどちらか一方を完全にオフとし、少し余裕ある生活の中で毎日を楽しむことにしています。
私にとっての留学意義について、留学が決まる前から考えていました。
①レベルの高い研究機関で研究に専念できる、②海外の研究者と知りあう事ができる、③海外の文化に触れることが出来る、④国際的感覚を身につけることが出来る、⑤高い業績をあげる・・・など、色々考えていました。
留学が始まってからは、ここで培ったものを今後どのような環境でどのように生かしていくか、そのためにはどうしたらいいのか?ということについてよく考えるようになりました。
月日が流れるにつれてまた考えも変わってくるものと思いますが、これは自分の中での小さな変化だと感じています。
最後になりましたが、留学の機会を与えて下さいました今村雅寛名誉教授はじめ血液内科の皆様、そして留学に際し御助言下さいました諸先生方へこの場を借りて厚く御礼申し上げます。