はじめに
現在、血液内科には多くの女性医師が所属しており、大学や一般病院で臨床に研究にと大変活躍されています。女性医師、特にこれから所属科を決めようと考えている女子医学生の方々にとってはその科の臨床研修内容や研究内容、学位・専門医資格の取得など以外にも、結婚や出産・育児と仕事との関係については非常に興味のあるところだと思います。このページでは当科の女性医師からのコメントや育児をしながらの就業スケジュールの実例をご紹介したいと思います。
血液内科所属の医師からのコメント
平成19年卒
早瀬 英子先生
私は医師3年目も終わりにさしかかった2月(27歳)の時に結婚し、医師5年目の5月(29歳)で妊娠しました。仕事のことを考えれば、妊娠は、認定医をとったあとか?学位をとったあとか?専門医をとったあとか?などと夫婦で悩みもしましたが、結局、いつ妊娠しても苦労することがあることに変わりはないし、それなら早く子供を作ろうということになりました。妊娠して職場に迷惑をかけてしまうことも心配していましたが、当時私が働いていた職場の先生方は「日本の将来のためにも、これから血液内科医になる先生のためにも、きちんと子供を作ったらいい」「妊娠して十分に働けなくなったとしても、また来年も一緒に働きたいよ」と言ってくださる本当に温かい先生方でした。夜中の呼び出しや土日の当番・当直の免除をしてもらったおかげで、妊娠9ヶ月の終わりまで仕事を続けられました。出産後は夫の勧めもあり、産後2か月で北大病院に仕事復帰し、北大の学内保育所に生後2ヶ月の娘を預かってもらうようになりました。2ヶ月の子供を預けているというと驚かれることが多いですが、娘はたくさんのおもちゃとたくさんのお友達に囲まれておうちにいた時よりむしろ楽しそうに過ごしています。今は8時半までに子供を預けて出勤し、夕方5時まで働いたら子供を迎えに行って帰宅しています。朝は二人分の支度と授乳、帰ってきてからも授乳、洗濯、子供のお風呂、(+夜泣き)とめまぐるしい毎日です。0歳児はワクチン接種が多く、土曜日はしばしばワクチンをうちに小児科通いになります。それでも大変さより毎日の楽しさの方が上回っているので不思議なものです。子供が生まれて、医師としては中途半端な部分が増えてしまい本当に心苦しいですが、周りの先生方には小さな子供を抱えながらも血液内科医として仕事を続けられるようサポートしてもらっていることに感謝でいっぱいです。
平成20年卒
横山 絵美先生
私は2008年に医師免許を取得して初期研修・後期研修の後に、2014年から北大血液内科学教室の大学院に入学しています。大学院在学中に34歳で結婚し、ほぼ同時に妊娠しました。予定していた妊娠ではなかったため、遠方への出張や当直の予定が入っていましたが、医局に相談し、周りの先生方に代わりに行ってもらえるように調整していただきました。妊娠初期はつわりで、後期になるにつれお腹の重みや頭痛、倦怠感で長時間研究をすることも難しくなりましたが、大学院生の皆様にその都度協力していただいて、産休まで研究を継続することができました。産休後は育休をいただいて、娘が7ヶ月になったところで大学院に復帰したばかりです。私や夫の親が近くには住んでおらず、夫の仕事も割と忙しいこともあり、夕方5時には研究室を出て保育園の娘を迎えに行きます。研究では、長時間の継続的な作業が必要となることもあるため、また周りの大学院生の方々に協力いただかなければならないこともあると思います。
血液内科では、スピード感がありかつ持続的、忍耐的な治療が必要な場面が多く、常に変化しやすい患者さんの状態に対応していかなければなりません。家庭を持ち子育てをしていく上では、なるべく患者さんの傍にとどまり対応してきた今までとは違い、限られた時間の中で自分がどのような役割を担えるかを考える必要があります。これは医局の方針や周囲の先生方の協力なしでは乗り越えられない問題でもあります。妊娠期間からここまで、医局長をはじめとした先生方には何かと配慮していただいたり声をかけていただき、とても感謝しています。今後、妊娠・出産、育児の経験が、血液内科医としてのキャリアの障壁ではなく、患者さんと向き合う自分をより成長したものにしてくれると信じています。
平成30年卒
森木 朝子先生
私は医師1年目の11月に北海道大学血液内科学教室に入局を決め、2年目の研修について考えていた3月に第一子妊娠が発覚しました。再受験で31歳になる年に医師となった身で、忙しい研修生活を送っていたため妊娠は不可能と思い込んでおりとにかく驚きと喜びが大きかったです。ただ現実的に考えて、初期研修を終えることや今後のキャリアプランについては不安しかないまま2年目をスタートしました。安定期を迎えたタイミングで医局に妊娠の報告をし、豊嶋教授からは「丈夫な子を産みなさい」と激励いただき、また後藤医局長の「3年目以降のことは心配ないから」という言葉に安心して帰路についたことを覚えています。周りの皆さんの協力の下研修をすすめ、体調を崩すことなく入院前日まで出勤して予定帝王切開の日を迎えました。元気な女の子を取り上げていただき、私も失血死することなく手術を終えました。産後2ヶ月半休み復職し、なんとか2年間で初期研修を終えることができました。
「育児をしつつ、内科専攻医取得を諦めなくて済むように」と医局長が考えてくださり、3年目は大学病院にて勤務を開始しました。外勤と当直・当番を免除いただき、私自身が体調を崩さずに娘と一緒に過ごすことができました。生後5ヶ月から保育園に通い始めた娘は早々と園に慣れて元気に通ってくれましたが流石に数回は熱を出しました。コロナ禍で病児保育はやっておらず、私も夫も両親が道外在住とあって頼れず、病棟の先生方の助けをお借りして我が子の看病にあたることができました。また5ヶ月間他科で研修をさせていただき初期研修中に経験できなかった症例を経験できました。J-Oslerへの登録はなかなか思うように進んでいませんが同期と同じタイミングで専門医試験を受ける望みは絶たれていません。
北海道大学血液内科学教室には私以外にも子育てしながら働く先生方がたくさんいらっしゃって、共感をもってサポート頂ける環境にあります。実際に働いてみて「女性医師に優しい教室」であると体感しています。感謝しつつ私もサポートする側になりたいと日々精進しております。
病棟医長
荒 隆英先生「男性医師の立場から」
厚生労働省による「平成30年医師・歯科医師・薬剤師調査」によりますと、平成30年12月31日時点における医療施設に従事する女性医師数は71,758人であり平成20年と比べて10年間で38%も増加しています。年代別の男女比をみると30-39歳では31.2%、29歳以下では35.9%が女性医師であり、比較的若手の年代で女性医師の比率が増えている傾向があります。
このように近年、女性医師は増加傾向ではありますが、女性医師へのサポート体制はまだ決して十分とはいえず、特に妊娠・出産に伴う休職や復帰に関する悩みは多く聞かれます。
私たち北海道大学血液内科では女性医師の皆様それぞれのライフスタイルや価値観を重視し、可能な限りサポートできる体制の整備をすすめております。実際、上述のように当科では多くの女性医師が妊娠・出産後も復職し、育児との両立を行なっておりますので参考になると思います。
ここで育児をしながら大学病院で臨床業務を行われた先生の一週間のスケジュールの一例をお示しします。
ある大学勤務女性医師の一週間のスケジュール例
この先生の場合では、本人と相談して、外勤は行わずにその時間を家族と過ごしたり専門医取得のための準備時間にあてることになりました。また、外勤を希望された場合にも、勤務先には欠勤や早退があり得ることを事前に承諾してもらうなどの配慮を行なっています。さらに、妊娠中の場合は外勤・外来を減らしたり、急な体調変化に合わせて診療グループ内でサポートするなどの対応も行なっています。
近年様々な場面で「働き方改革」が叫ばれており、人々の健康を司る医師自身の健康が軽視される風潮は過去の遺物です。今後は男女関係なく、それぞれのライフスタイル・価値観にあった働き方が構築されていくべきと考えます。
休職や復帰の問題でお悩みの女性医師の皆様、そして今後の進路でお悩みの医学生の皆さん、その悩みを一人で抱えず、まずは我々にご相談ください。何かしらサポートできることがあるはずです。ぜひ北海道大学血液内科で共に働きましょう!!
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