留学体験記

ミシガン大学がんセンター 骨髄移植部門 Research Investigator/平成11年卒 東梅 友美

写真:東梅 友美
研究内容について
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ミシガン大学BMTプログラムのメンバー。前方左が私で、その隣がボスのDr. Reddy。順にDr. Ferrara、Dr. Paczesny。

私は2006年11月より米国ミシガン州アナーバー市にあるミシガン大学がんセンター骨髄移植部門のDr.Reddyラボに留学しています。
すでに5年以上日本を離れておりますので、すでに留学という範疇は超えており、正確には勤務しているということになりますでしょうか。
大学での身分もポスドクからResearch Investigator という大学Faculty(日本でいう助教レベル)の一員になりました。
もともと5年程度はじっくりと基礎研究に打ち込もうと考え、渡米したのですが、ミイラ取りがミイラになってしまったようです。

研究は主に造血幹細胞移植後のGraft-versus-host-diseaseの病態解析と効果的なGraft-versus-tumor effectの誘導法についてマウスモデルを用いて検討しています。
同種造血幹細胞移植は全世界で年間2万件以上行われており、成績も年々、徐々に改善しておりますが、まだ、すべての患者さんがその恩恵を受けているとはいえません。
多くの患者さんの治癒のためには移植における様々な事象の病態を解析し、治療法の開発を行う必要がありますが、その研究者はまだ多くありません。
そういう観点から、私は自分自身の研究については、研究のための研究ではなく、完全に日常臨床における疑問点の解決に主眼をおいて行うようにしています。このことはPhysician Scientistとしては当然のことです。
骨髄移植が始まって既に60年以上経過しましたが、未だにGVHD治療はステロイド治療がメイン。この状況を改善するためには、GVHDの病態をより明らかにし、できることならターゲットとなる分子標的を見つけ、新規の治療法を開発することが急務な課題と考えています。
また、移植後再発の予防および血液悪性腫瘍に対する効果的な免疫療法の可能性を探ることも我々の使命と思います。

さて、日本の臨床医が留学する場合には、多くが2-3年で、海外生活を経験することに主眼をおく、“体験型”の留学者が圧倒的に多く、non-MDの方のようにこちらで自分の力を試そうという“実践型”の割合が非常に少ないのが現状です。
私もどちらかといえば前者であったと思いますが、実際には“体験型”ではこちらのボスや周りも“お客さん”という感じでしか見てくれません。
アメリカに来て驚いたのは、アメリカには一攫千金を狙う、ポスドクが全世界から集まってきていることです。彼らは驚くほど野心家で、そのほぼすべてが“実践型”です。特に中国人ポスドクのタフさにはなかなか敵いません。そういうポスドクと同じ土俵で戦う場合には、我々も意識改革が必要と思います。
日本人臨床医で研究を行う人の個人能力については、優秀でかつ日々の臨床の忙しさからか、うまく時間配分ができる人が多いように感じていますが、留学に入るときの気構えや英語力(英語教育のレベルの低さ)でその能力が完全に発揮されているとはいえないでしょう。
もし、我々が全力で取り組めば、日本人PIとしてアメリカでも活躍できるはずです。
最近はミシガンでも私が知っている限り何人かの日本人Physician Scientistが自分のラボを運営し始めています。
すべての血液内科医がこういう気持ちで海外にこられると、今度は日本の臨床が大変になりますが、少なくとも、大学院の研究生活で我こそはと思うような方は、積極的に留学を希望し、世界レベルで研究者として挑戦されてみてはいかがでしょうか。