臨床研究

  • 当科で参加している多施設臨床研究
  • 移植片対宿主反応が骨髄における造血および、その微小環境に及ぼす影響の検討
  • 肝中心静脈閉塞症の診断における超音波検査の有用性の検討
  • 急性リンパ性白血病患者に対する中等量VP-16、シクロフォスファミド、全身放射線照射(Medium-dose VP/CY/TBI) 前処置を用いた同種造血幹細胞移植法の有用性の検討

急性リンパ性白血病患者に対する中等量VP-16、シクロフォスファミド、全身放射線照射(Medium-dose VP/CY/TBI) 前処置を用いた同種造血幹細胞移植法の有用性の検討

北海道大学病院では1990年代より標準的移植前処置であるCY/TBIに, 中等量のVP-16 を追加した移植前処置を施行してきた(図1).この中等量VP/CY/TBI前処置が急性リンパ性白血病(ALL)に対し良好な移植成績をもたらす可能性があることを報告してきた.1) さらに, 造血幹細胞移植学会のデータベースを用いた後方視的解析において, 非再発死亡を増加させることなく, 再発率の低下をもたらすことにより, CY/TBIと比較し優れた生存率を示すことを報告した.2) 2009年からは, 厚労省班研究として多施設共同の臨床第Ⅱ相試験(UMIN 1672試験)を行い, 100日以内の早期死亡率0%, 1年無再発生存率76%と良好な成績を報告した.3)

図:急性リンパ性白血病患者に対する中等量VP-16、シクロフォスファミド、全身放射線照射(Medium-dose VP/CY/TBI) 前処置を用いた同種造血幹細胞移植法の有用性の検討

Reference

1)Excellent outcome of allogeneic hematopoietic stem cell transplantation using a conditioning regimen with medium-dose VP-16, cyclophosphamide and total-body irradiation for adult patients with acute lymphoblastic leukemia. Shigematsu A et al. Biol Blood Marrow Transplant. 2008;14:568-575.

2)Outcome of medium-dose VP-16/CY/TBI superior to CY/TBI as a conditioning regimen for allogeneic stem cell transplantation in adult patients with acute lymphoblastic leukemia. Shigematsu A et al. Int J Hematol. 2011;94:463-471.

3)A safety and efficacy study of medium-dose etoposide, cyclophosphamide and total body irradiation conditioning before allogeneic stem cell transplantation for acute lymphoblastic leukemia. Shigematsu A et al. Transplantation Direct. 2015;1:1-7

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移植片対宿主反応が骨髄における造血およびその微小環境に及ぼす影響の検討

庄野雄介らはマウスGVHD モデルの解析から“骨髄GVHD(骨髄造血ニッチ、とくに骨芽細胞の障害による造血細胞の再構築抑制)”が同種造血幹細胞移植に伴う骨髄抑制(造血不全)の原因となっていること、また抗CD4抗体治療により骨髄GVHD を著しく軽減できることを報告した1)。その後、北海道大学病院でマウスモデルにおける“骨髄GVHD”と相同な現象がヒトで認められるか否かを明らかにすることを目的に2010年2月から2012年2月まで単施設での前向き臨床研究を開始した。登録総数57例、うち51例が解析対象となり、骨髄病理標本の検討を病理部、末梢血サンプルのフローサイト解析を検査部と連携して施行した2)。結果は、慢性期のGVHD症例において、マウスの結果と相同性を認めるもので、原因不明の汎血球減少が骨芽細胞の消失で説明できる10症例があり、骨髄における骨芽細胞の消失は血球減少症例で有意に高い事実を発見した。また、フローサイトメトリー解析では骨芽細胞の消失はCD19陽性B細胞数の減少およびCD4/CD8比の増加につながっていた。その後、ドイツのグループから2014年に入り52例の患者の同様な解析が発表され(Mensen et al., Blood 2014)、これにより複数の施設からドナーT細胞が引き起こす「骨髄GVHD」により移植後のB細胞回復が遅延する事実が確認された。臨床上認められる事象の疑問から、マウスの実験を経てメカニズムを解析し、臨床に戻ってその事実を確認するという一連の流れを完結させることが出来、世界に先駆けて北大から、多数例の臨床検討報告おこなうことができた。これらの成果により、将来的には骨髄GVHDに対する有効な治療法の開発、さらには同種造血幹細胞移植そのものの治療成績の向上につながる可能性が期待される。

図:移植片対宿主反応が骨髄における造血およびその微小環境に及ぼす影響の検討

Reference

1)Shono Y, Ueha S, Wang Y, Abe J, Kurachi M, Matsuno Y, Sugiyama T, Nagasawa T, Imamura M, Matsushima K. Bone marrow graft-versus-host disease: early destruction of hematopoietic niche after MHC-mismatched hematopoietic stem cell transplantation. Blood 2010, 115:5401-5411. (Commentary in Blood 2010, 115:5284-5285, Featured in Science-Business eXchange (SciBX), doi:10.1038/scibx.2010.476)
2010;115:5401-5411.

2)Shono Y*, Shiratori S*, Kosugi-Kanaya M, Ueha S, Sugita J, Shigematsu A, Kondo T, Hashimoto D, Fujimoto K, Endo T, Nishio M, Hashino S, Matsuno Y, Matsushima K, Tanaka J, Imamura M, Teshima T. Bone Marrow graft-versus-host disease: evidence of its clinical impact on disrupted hematopoiesis after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation Biol Blood Marrow Transplant 2014, 20:495-500. *shared first authorship (Featured in Global Medical Discovery 2014)

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肝中心静脈閉塞症の診断における超音波検査の有用性の検討

肝中心静脈閉塞症(hepatic veno-occlusive disease: VOD)は造血幹細胞移植後に発症する重篤な合併症の一つであり、類洞閉塞症候群(Sinusoidal obstruction syndrome: SOS)とも呼ばれている。
VODを発症するときわめて致死率が高いため、早期に診断することが重要であるが、McDonaldらの基準など黄疸、肝腫大・右季肋部痛、腹水・体重増加などを特徴とする臨床診断のみでは早期診断は困難であった。
また肝生検や経頸静脈的肝生検により早期診断が可能である可能性はあるが、移植後の血小板減少、凝固能異常により施行困難である場合が多いのが通常である。
超音波検査は侵襲なく肝臓サイズや血管径、血流状態を評価可能であることからVODの診断に有用である可能性を示唆する報告は散見されるものの、その計測項目は統一されていない。

現在、北海道大学病院では西田睦らを中心としVODの診断における超音波検査法を用いたスコア化(北大スコア)の有用性を明らかにするために、2010年より単施設による臨床試験を開始している。 現在までに学会を中心に報告を行い、その有用性に期待が集まっている。

B mode計測項目 基準値1 基準値2   合計
1 肝臓サイズ 左葉<70mm 左葉<70mm 各1点 2
2 脾臓サイズ spleen index=長径×短径×0.9<33.0   1
3 胆嚢壁肥厚 <5mm   1
4 門脈本管径 <12mm   1
5 肝静脈径(図1) 左、中、右(合流部から20mm末梢部)<3mm 各1点 3
6 腹水 無し   1
7 傍臍静脈径 <2mm   1
B mode score 小 計 10
Doppler計測項目        
8 門脈平均血流速(図2) <10cm/sec   1
9 門脈血流方向 求肝性   1
10 傍臍静脈血流信号の有無 無し   1
11 肝静脈波形 左、中、右、各三相波 各1点 3
12 肝動脈 resistive index(RI)<0.75   1
Doppler score   小 計 7
北大スコア 合 計 17
図1:中肝静脈径計測
図1:中肝静脈径計測
図2:門脈本幹流量計測
図2:門脈本幹流量計測
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当科で参加している多施設臨床研究

緑色に塗られているのものは当科が責任研究者となっている研究です。

研究課題名 登録開始
【造血幹細胞移植関連】  
骨髄破壊的前処置による移植後シクロホファミドを用いた血縁者間HLA半合致移植の安全性と有効性の検討 2014年8月
強度減弱前処置による移植後シクロホスファミドを用いた血縁者間HLA半合致移植の安全性と有効性の検討 2014年8月
抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリンを用いた同種末梢血幹細胞移殖療法の多施設共同パイロット試験 2013年11月
菌状息肉症/Sezary症候群に対する同種移植後における早期再発予防としてのVorinostat療法 2013年6月
フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)における、自家末梢血幹細胞移植とチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)での維持療法の安全性について検討する多施設臨床試験 2013年6月
高齢者骨髄性悪性疾患に対するG-CSF併用cytarabineとリン酸フルダラビン、静注ブスルファンによる移植前治療を用いた同種骨髄・末梢血幹細胞移植の安全性と有効性の検討 2013年5月
高齢者骨髄性悪性疾患に対するG-CSF併用cytarabineとリン酸フルダラビン、静注ブスルファンによる移植前治療を用いた臍帯血移植の安全性と有効性の検討 2013年5月
GVHD予防に抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリンを用いたGVH方向1抗原不適合血縁者からの造血幹細胞移植の多施設共同第II相試験 2013年8月
再発および治療抵抗性末梢T細胞リンパ腫に対する減量強度移植前治療を用いた同種造血幹細胞移植法の有効性に関する検討 2013年5月
難治性および再発性HIV 関連悪性リンパ腫に対するMEAM 療法を前処置とするHAART 併用自己末梢血幹細胞移植に関する多施設共同第Ⅱ相臨床試験 2013年3月
初発フィラデルフィア染色体陽性成人急性リンパ性白血病を対象としたダサチニブ併用化学療法および同種造血幹細胞移植の臨床第II相試験(JALSG Ph+ALL213) 2014年
【急性白血病関連】  
成人急性リンパ性白血病に対する治療プロトコール -ALL/ MRD2014- 2014年1月
Dasatinib単剤による高齢者難治性Philadelphia陽性急性リンパ性白血病に対する前向き多施設共同研究第二相試験 2012年6月
【慢性骨髄性白血病関連】  
1年の完全分子遺伝学的効果を有する初発慢性期慢性骨髄性白血病に対するダサチニブ治療中断試験実施計画書 2013年7月
2年の完全分子遺伝学的効果を有する慢性期慢性骨髄性白血病に対するイマチニブ治療中断試験 2013年11月
1年の完全分子遺伝学的効果を有する慢性期慢性骨髄性白血病に対する2nd lineダサチニブ治療中断試験 2012年9月
日本国内における初発未治療の慢性期慢性骨髄性白血病患者を対象とした観察研究 2010年
【悪性リンパ腫関連】  
初回再発・再燃濾胞性リンパ腫に対するBendamustine+Rituximab 療法終了後のFDG-PET/CT を用いた研究 W-JHS NHL01 2014年2月
初発未治療のAIDS関連バーキットリンパ腫に対するRituximab併用dmCODOX-M/IVAC療法の有用性に関する多施設共同第II相臨床試験 2013年12月
血管内大細胞型 B 細胞リンパ腫 (Intravascular large B-cell lymphoma; IVLBCL) に対する R-CHOP + R-high-dose MTX 療法の 第 II 相試験 2011年
同種造血幹細胞移植後に再発・再燃した成人T細胞性白血病/リンパ腫患者の治療法および予後に関する前向き観察研究 2013年7月
T細胞性リンパ腫発症機序の解明 2015年1月
【造血不全関連】  
骨髄不全症候群および発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)疑い症例におけるGPIアンカー膜蛋白欠損血球の保有率とその意義を明らかにするための観察研究 2011年11月
巨核球増加を伴わない血小板減少症における免疫病態マーカーの検出と予後の検討 2011年6月
【感染症関連】  
造血幹細胞移植後アデノウイルス感染症に対するシドフォビルの有効性と安全性に関する多施設共同・非対照・非盲検・探索的臨床試験 2013年6月
持続する発熱性好中球減少症に対する従来型の経験的抗真菌治療とD-indexに基づく早期抗真菌治療の無作為割付比較試験 2013年5月
造血幹細胞移植後におけるB型肝炎ウイルス再活性化の実態および予防に関する多施設共同臨床研究 2014年1月
同種造血幹細胞移殖後患者における13価肺炎球菌ワクチン複数回接種の有効性および安全性の評価 2013年1月
発熱性好中球減少症(Febrile Neutropenia, FN)患者におけるプレセプシンの有用性に関する研究 2014年8月
【HIV関連】  
早期HIV感染者の予後に関するアジア多施設共同研究 2012年1月
日本におけるHIV関連神経認知障害に関する疫学研究 2014年12月
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